田舎の床屋のオヤジに見る影響力とその行く末

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起業後、999日目。

今日は、田舎の床屋のオヤジに見る影響力とその行く末について。

1年ほど前から、僕はKLOUTスコアというTwitterやFacebookなどのソーシャルメディア上における、人の影響力を測定するツールの研究をしている。

研究を続けていくうちに、「ソーシャルメディアをほとんど使わないけども、影響力がある人」の存在が気になりだした。こういう人はたしかに存在するのだが、どうもネットとかマーケティングの業界にいると、おざなりにしてまう。

そのモデルの一つが、灯台下暗し。実の父親(64才)だった。

先週土曜日、僕は実家の浜松に帰省した。そこで、久々に父と時間を共にし、観察する機会を得た。すでに床屋を畳み、一切仕事をせず、文字通り、悠々自適な老後を送る父は、格好の観察対象だった。悠々自適と言えば聞こえは良いが、普段は実家のソファでゴロゴロしている。

父は、田舎のふつうの床屋のオヤジだ。

ところが彼は、子供4人を育て上げ、兄を国立大と大学院へ、僕を東京の私立大へ通わせた。そして、最近知ったのだが、彼が40代の頃には、土地と新築の家を全額キャッシュで買っている。そして今は、3ヶ月に1回ぐらいの頻度で海外旅行を楽しんでいる。祖父の代からの多少の蓄えと時代の後押しもあると思うが、この年になるとその財力に尊敬の念を抱かざるを得ない。

ちなみに、うちの床屋のサービスや価格は、他の床屋と比べて差別化できるようなものはなかった。しかし、父への聞き込み調査によると、平日でも最低毎日10人以上、土日や祝日には1日20人以上のお客が来店しており、同じようなサービスと価格を提供する近隣の床屋よりも、繁盛していたようだ。

「何が繁盛をもたらしたのか?」興味があった。

結論から言うと、「色々なことに首を突っ込み、対話することによって、浜松市内の一部地域における影響力を、他の床屋のオヤジよりも多く獲得してきたことが競争優位だったのではないか」ということだ。

一緒にどこかの飲み屋に行くと、必ず「おお!さーにい!!(父・定雄の愛称)」と声をかけられる。店長はもちろん、他のお客の中にもかなりの割合で父の知り合いがいて、そこから「最近どうだ?」みたいな会話がはじまる。場合によっては、ビールの中ビンあたりが無料でサービスされる。

道を歩いていると、色んな人が挨拶してきくれる。そこから「最近どうだ?」みたいな会話がはじまる。その相手は、子供から大人までかなり幅広い。そして、恐るべきことに、それらの人々の家族構成や仕事、趣味などについて、たいていうちの父は把握している。

床屋という商売自体が、田舎の集会所=コミュニティという性質を持っているから、知り合いが他の人より多いのも理解できる。しかし、驚くべきはその地域的広さだ。うちの床屋は浜松市内の北区(旧:引佐郡細江町/奥浜名湖のあたり)というところにあるのだが、他の町、区に行っても、話しかけられることが多いことから、その影響力の広さを伺い知ることができる。

だから、「似たような場所で、似たような価格で、似たようなサービスを提供する床屋が数軒あった場合、「どうせなら、さーにいのところに行こうかな?」という流れができても不思議ではない。

次に気になるのは、「どうやって、このような影響力を持つに至ったか?」ということだ。

そこで、「色々なことに首を突っ込む」という行動特性が出てくる。

まず、20代の頃から趣味で野球やソフトボールをやっていた。しかも、最大3チーム掛け持ちで。その上、30〜40代の頃には、4番 且つ ピッチャー 且つ 監督みたいな無茶苦茶なポジションで、選手としてプレイ&マネージメントを行っていた。その頃の選手にしてみれば、父はちょっとした兄貴&師匠的な存在なのだろう。

次に、30代になってからは、僕を含めた兄弟たちが通う学校のPTA会長をやっていた。最終的には、小学校&中学校&高校までオールコンプリートしたようだ。僕が小学生のときも、入学式や卒業式における「来賓祝辞」みたいなコーナーで、自分の父親が出てきたことを気恥ずかしい気持ちと共に覚えている。しかし、他の人からすれば、「偉いっぽい」オジさんということになるだろう。

最後に、昔から、むちゃくちゃ飲み歩いている。近隣の飲み屋はもちろん、浜松市街のキャバクラ、フィリピンパブ、コリアンパブまで、彼のテリトリーは広い。一度、彼と共にフィリピンパブに行ったことがあるのだが、当然のように「矢野定雄」でボトルが入っていた。そして、隣のオヤジのマイクを奪って、フィリピンパブでハングルの歌を歌いだす。挙げ句の果てに、僕の大学時代の友人とフィリパブ嬢と父と僕による総勢8人くらいによる「ジャンケンで負けたら一気飲みよ」ゲームを父が提案し、僕たちはクタクタになったことがある。にも関わらず、60を超えた父は当然のように2軒目の提案をしてきた。彼曰く、本当の遊びは3軒目からだそうだ。兄の報告では、浜松市内のおかまバーにも矢野定雄のボトルが入っているらしい。国籍はおろか、ジェンダーも飛び越えるその機動力と社交性には、驚くべきものがある。他の人から見れば、豪快に遊ぶ元気な楽しいオッサンということになるだろう。
※父は、オカマではない。

彼は、mixiだのTwitterだのFacebookだのは一切使わない。しかし、これだけ広範囲に色々なところに首を突っ込み、対話を重ねていたら、そりゃ一部地域の影響力も高まろうというものだ。

「やいやい、◯◯の××くんに誘われたで〜まいっちゃうや〜(遠州弁)」と彼はよくぼやく。そして、周りの人から頼まれたり、誘われたりすることに多少の煩わしさを感じつつ、「まんざらではない」感じで色々な物事を引き受ける。基本的には、自分の好きなことを商売のことを気にせずにやるスタンスをとっている。

中3の頃、一度だけ僕に「たかし(僕)、床屋になれ。床屋は儲かるぞ」と語ったことがあるのだが、たしかに、儲かっていた。しかし正しくは、「オマエが、オレが築き上げた顧客とそのPR手法を踏襲する限り、床屋でも儲かるぞ。そして、そのPR手法は、決して狭い視野で考えないことだ」ということだったのだと思う。

最近、浜松市内に限らず日本全国で、コンビニや飲食店のFC、郊外型の大型ショッピングモールによって、地場の個人商店や商店街が駆逐されている。また、それらに付随していた地域コミュニティも弱くなってきている。

しかし、このネットやソーシャルメディアに限らない影響力を拡大する方法、広い意味でのPRには、学ぶべき点が大いにあるだろう。まして、あらゆるモノがコモディティ化し、物質的充足感よりも、精神的充足感に価値が置かれる昨今においては、なおさら。

僕らは、ついつい、新しい変化に対して興味を抱くと共に、過度に評価しがちだが、よく目をこらせば、古き良きもので、未来でも役立ちそうなものはゴロゴロしている。

そのモデルの1つが、実家のソファでゴロゴロしている父(64才)だった。

最後に、「人が人に与える影響力は、最終的にはどうなるんだろう?」
という疑問に想いを馳せた。

そして、母親の墓参りをしていて、ふと思った。

「その人のオンライン&オフラインにおける影響を、
最も正確に測定できるのは、その人が死んだ後だろうな」と。

具体的には、葬式や墓参りの風景。

そのときに分かる影響力は、故人本人にはもはや意味がない。
しかし、残された人達には、大いに意味がある。

不思議なことに、生前に影響を与えれくれた人が死ぬことによって、
僕たちははじめて、本気で故人のメッセージを読み解こうとする。

影響力の範囲や深さの違いはあれど、こうして影響を受け合って、連綿と人間は進化していく。
そして、その大きな流れの中に、人間としての充足感があるのではないかと思う。

自分より大きな、善なる存在(地域コミュニティや先祖など)を思いながら、そういったものに対する結びつきを深めることは、特定の宗教をもたない僕たちにとって、大いなる安らぎになる。

都会とビジネスの喧噪から逃れて、ひとたび心を鎮めれば、
お寺の脇に立つ 苔むした地蔵あたりが、
あなたに大切なことを語りかけてくれるかもしれない。

たまには、故郷に帰るのも良いものだ。

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Comments

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46 Responses to 田舎の床屋のオヤジに見る影響力とその行く末

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