起業後、1017日目。
今日は、効果的なコミュニケーションについて。
昨年の秋からはじめた就活相談会、早いものでもうすぐ1年たつ。
この会は、某PE(プライベート・エクイティ・ファンド)で働く大学時代の先輩と一緒にやっている。そこでその先輩が語った「一生、食うに困らない程度には金を稼ぐことができるコミュニケーション方法」という言葉が刺さったので、「それって何?」を端的に紹介しようと思う。
1:効果的なコミュニケーションとは?
そもそも、「効果的なコミュニケーション」とはなんだろうか?
一言で言うと、「 相手にとって自分や商品が有益であり、かつ、自分がハッピーになれるのであれば、狙ったアクションをとってもらうことを目的にして、 自分や商品を正確に理解してもらうために、効果的に情報伝達すること」だ。
長ったらしい説明だが、まずこの定義の段階で、多くの人が勘違いをしている。
例えば、就職活動であれば、「人が羨むような有名企業から内定がもらえることを目的に、企業側のニーズに即して自分を偽って自己PRする」こと。営業活動であれば、「自社の右肩上がりの売上成長を目的に、企業側のニーズに即して自社の商品を過大に良く見せてアピールする」こと。これらは、「効果的なコミュニケーション」ではない。
なぜなら、おいおい、採用側と自分、もしくはクライアントと自社を不幸にするからだ。就職で言えば、採用ミスマッチが発生して、早期退職につながる。営業で言えば、クライアント側の期待値と自社商品が提供する価値にギャップが生じ、クレームにつながる。たしかに、短期的には目的(利益)を達成することができるかもしれないが、中長期で見れば、いいことがない。
では、双方が継続的にハッピーになれる効果的なコミュニケーションとは、どのようなものなのだろうか?
2:コミュニケーションを3ステップに分ける。
ステップ1:伝えたいことを調査・立案する
ステップ2:伝えたいことを正確に分かりやすく伝達する
ステップ3:相手から望ましいアクションを引き出す
ステップ1:伝えたいことを調査・立案する
まずはじめに、伝えたいことの調査・立案からはじめる。
例えば就職活動の場合、「自分とはなんなのか?」を掘り下げる必要がある。ここでのポイントは、世間や企業が求める人材像に引っ張られることなく、「本当の自分」を見つめることだ。
「本当の自分」というと途端に迷宮に入り込みそうだが、コレは事実と解釈をごちゃ混ぜにして考えるから起こる。まずは、友人・知人・親兄弟に聞くなり、過去の自分を振り返るなりして、事実をひたすらに列挙すると良い。すると、驚くほど多様で多面的な自分の特徴が見つかるだろう。それで良い。
しかし、それをそのまま過剰書きの状態でESを書いたり、要点をまとめずに面接で自己PRをしてみても、まず落ちる。落ちる以前の問題として、「伝わらない」状態が続く。なぜなら、「要するに、あなたはどういう人なのか?」相手が理解できないからだ。
では、どうすれば「伝わる」情報に加工できるのだろうか?
ステップ2:伝えたいことを正確に分かりやすく伝達する
まずは、自分に関する情報を、同じような形をした情報毎に分類する。
例えば、「ダイヤの原石」を例に考えた場合、「ダイヤの原石」には「磨くと光る」「地球上に限られた数しかない」「硬い」「そのままだと目立たない」「重い」「火に弱い」「天然ものは高価」「水で加工する」などの色々な特徴がある。
これを似たような特徴によって、グループ分けする。例えば、1:「美しく変化し」/2:「貴重であり」/3:「性質が持続する」物質である、という具合に。
1:「美しく変化し」=A:磨くことで光る/B:ほかの物質では出せない輝き/C:地球上でもっとも透明度の高い結晶
2:「貴重であり」=A:地球上に限られた数しかない/B:作られるプロセスには数万年かかる/C:人工で作る技術では限界がある
3:「性質が持続する」=A:地球上でもっとも硬い/B:何万年たっても物質が変化しない/C:零下~数百度の間では変化しない
「私(商品)の特徴は、主に3つあります。具体的には〜」という説明は分かりやすい。
コレだけで、グッと分かりやすくなる。
注意点は、冒頭で触れたように、「相手のニーズに引っ張られて加工しすぎないこと」だ。相手によっては、「美しいものは欲しいが、瞬間的なモノで良い(花火など)」とか、「性質の持続する固いものがほしいが、安いモノが良い」(工業用人工ダイヤなど)などが本当に欲しいものだったりする。
相手が有名企業だったり、偉い人だったりすると、ついつい相手に合わせて背伸びしそうになる。しかし、おいおい買い手にとっても不幸なことになるし、ダイヤの原石にとっても不幸なことになるから、ここで誘惑に負けてはいけない。
次に、双方にとって望ましいアクションを起こしてもらうために、論理構成を明確にする。
論理構成と言うと難しそうだが、要は、「伝えたい結論=起こしてほしいアクション」を頂点として、「その理由=なぜアクションを起こすべきなのか?」という根拠を明確にすることだ。
そのためには、「なぜ?」「だから何?」「それって本当?」をひたすらに考えて、整理することだ。
例えば、「フジテレビは、韓流コンテンツばかり放送している」と「フジテレビの外国人直接株保有比率は28.6%」という事実から、「フジテレビは売国奴である→けしからんからデモすべき」という解釈とアクションに至るのは、少々短絡的だ。
「フジテレビは、韓流コンテンツばかり放送する」理由は、複数考えられる。例えば、「コンテンツの仕入れ値が安い」「一定の視聴率を固く見込める」「レンタルビデオやグッズ販売など、2次利用する際の権利処理が国産コンテンツよりも容易」「映画やマンガなどの原作をテレビドラマ化することを続けたことによって、オリジナルで魅力的なストーリーを生み出せるシナリオライターが減った」など。
※上記はすべて思いつきの例え話であり、僕が事実確認を行った訳ではない。
このように「なぜ?」「だから何?」「それって本当?」を駆使して掘り下げるための便利なフレームワークとして、「空」「雨」「傘」というものもある。
「空」=空が曇っている(事実)
「雨」=雨が降るだろう(解釈)
「傘」=傘を持って外出した方が良い(行動)
一番注意したいのが、「空」(事実)と「雨」(解釈)をごちゃ混ぜにしてしまうことだ。「事実」とは「客観的事実」であり、「解釈」とは「主観的意味合い」のことである。
会社に入社したばかりの新卒の子なんかは、この「事実と解釈をごちゃ混ぜにしてしまう」誤りをおかすことがある。
新卒「部長!クライアントA社がメディアB社に大量出稿をはじめました。いよいよ、A社の業界がネット広告の有用性に気がついたに違いありません。一刻も早く、メディアB社の広告枠を我々で買い占めましょう!取り急ぎ、B社との打ち合わせを明日で調整しておきました!!(ドヤ顔)」
部長「アホ!!それはただのバーター(何かしらの交換)だ!B社との打ち合わせ、すぐキャンセルしろ!次からは、主観だけで動くなよ!」
こういう失態を繰り返して、新卒の子は「一つの事実に対する原因や解釈は、複数考えられる」ということを学んでいく。
このような「なぜ?」「だから何?」「それって本当?」を粘り強く続けられる思考力(姿勢)を獲得できれば、四半世紀はメシを食っていけると思う。控えめに表現したが、当面のあいだ、けっこう良いお給料をもらうことができると思う。
逆に言えば、こういった姿勢で物事を見たり、考えたり、行動できる人は少ない。
3:相手から望ましいアクションを引き出す
このように、「アイディアや伝えたいことを立案」し、「それを正確に分かりやすく伝達」した後に、はじめて「相手から望ましいアクションを引き出す」ことができる。
ここで注意したいのは、「望ましいアクションが得られなかったからと言って、過剰に凹む必要はない」ということだ。
例えば、就職活動を「有用な人間が選ばれるプロセス」という風に捉えると、辛いし傷つく。営業活動を「自分の営業力や努力を問われる実践の場」という風に捉えると、辛いし嫌になる。
そうではなくて、「自分が劣っているからではなく、合っていないから」とか「入ってから後悔する会社を排除することができて、良かった」とか前向きに捉える方が気が楽だし、中長期でも幸福度が高い。
本当は、日本の有名企業に就職すること自体が合ってないのかもしれない。留学したり、自分で会社をつくったり、フリーとしてやっていったり、NPOに入ったり、他の道の方が合っているかもしれない。
立て続けに落とされると凹む気持ちもよく分かるけども、そこをぐっと堪えて、「自分とは何か?何がやりたいのか?」という情報の収集と解釈、そして、「それを正確に伝える」方法を考えて実行することに注力した方が良い。
最後に、「就活は気持ち悪い」と感じながら、就活する学生へ。
「違和感」を感じながら、イス取りゲームを続けるのはやめた方が良い。有名企業の偉い人に「仰る通りです」なんて言いながら自分を偽るのは、君に合ってないのかもしれない。
君にふさわしいのは、他の教室に移動して、誰も座ったことがないイスに座ったり、あるいは、教室の隅っこでイス自体を作ることじゃないかな?
大きな視点で見た場合、「こういう変なヤツの方が、社会には必要」だと僕は思う。
「自分で考えた」と思っていることの多くが、「親や先生など、世間様が考えたこと」だったりする。実は、「せっかく良い大学に苦労して入ったのに」という埋没費用に溺れているのかもしれない。
もっと、自分の「違和感」を大事にしよう。
きみが感じる「違和感」こそが、きみの存在理由であり、価値の源泉だと思う。
四半世紀は、しんどいかもしれないけども、
次の四半世紀は、そんなきみが、みんなを食べさせているかもしれない。
ただ、自分を正確に理解してもらう努力は、怠らないようにね。
どちらかと言うと、僕は君たちの仲間だ。