起業後、993日目。
今日は、オフィスの移転について。
8月8日にオフィスを移転した。
創業時のオフィスから数えて、3つ目のオフィスになる。
2008年創業時の1つ目のオフィスは、僕の自宅だった。僕の居住スペースと仕事スペースは渾然一体としていて、狭くて、とにかくワチャワチャしていた。。なにしろ、7畳しかなかった。
当時、第1号社員として働いていた利岡くんは、スペースがなかったので、トイレの真ん前に席を構えた。他のメンバーがトイレに行くたびに、「邪魔くせーな」という言われのない視線を感じたに違いない。その度に利岡くんは、「すみません」と言って席を立っていた。
当時、全然お客さんがいなかったので、真っ昼間なのに暇なときがけっこうあった。そんなときは、PS2のウィニングイレブンをやって、盛り上がっていた。「コナミのゲームは素晴らしいな!」と感動して、コナミさんにTELアポを試みたが、これが見事にアポがとれなかった。
当時、来客用のソファは僕のベッドでもあった。そこに上場企業の社長さんなんかがよく座ってくれて、なんだかCGみたいな感じがしたものだ。普通、CGは立派な背景に人間をはめ込むものだと思うが、このときは、しょぼい背景に立派な人間をはめ込む「逆CG」みたいな感じがした。
とんでもなくボロくて、狭いオフィスだったが、色んな人が来てくれたのは本当に嬉しかった。
2009年に引っ越した2つ目のオフィスは、主におしゃれアパレルショップが店を並べる渋谷区神南のビルだった。1つ目のオフィスの名前が「◯◯荘」だったのに対して、ここは「◯◯ビル」という名前だったので、静かな興奮を覚えたものだ。「オレたちもついにビルに入るときがきたか。。」と。築40年でALL階段なんだけど。
神南は、お洒落な若者が行き来する街だ。これまで、マーケティングやネット関係の人達とばかり交流していたのだが、この辺は、お洒落なショップ店員や飲食店の方がマジョリティーだった。
1Fでタバコを吸っていると、そういう人達とよく雑談がはじまった。やっていることもバックグラウンドも全然違う。新しいモノの見方や考え方に触れ、刺激的だった。
ある時、近所の店長から「自分、昔は渋谷でチーマーやってたっす。矢野さんもそんな感じですよね〜。そういう匂いがプンプンしますよ。」と決めてかかられたことがある。本当は、本読んだり、地下で演劇やったりなど、バリバリ文化系の大学生活を送っていたんだけど。「昔のことはイイじゃないですか。」とカッコつけてしまったことをココに白状する。
なんだか違う人達に認められたような気がして、嬉しかったのだ。
そして、2011年の昨日、3つ目のオフィスに引っ越した。
今度は、築6年でエレベーター付き。おまけに、オートロックまでついている。一気に近代まできてしまった。ポストモダンもすぐそこだ。
僕はここで、2つのことを思う。
1つ目は、「ここまでの道のりがとても楽しかった」ということだ。日本は他の国から見れば、豊かな国になった。新卒で大手の会社に入社すれば、最初からキレイなオフィスに入り、備品も充実している。それが当たり前だと思う。
しかし、本当に楽しいのは、少しずつ、右肩上がりに豊かになることだと思う。MTGテーブルがなかったけど買ったとか、ホワイトボードがなかったけどもらったとか、エレベーターがなかったけど付いたとか、その過程に充実感とか幸福感があるのだと思う。
その意味で、最初からキレイなオフィスで、モノも揃った状態で仕事をはじめる人達は、この楽しみを味わえないので、もったいない気がする。一方で、大きな会社や豊かな国を作った先輩や先人は、なんて楽しく、充実した時間を過ごしてきたんだろうと思う。そこには、若くて豊かな人達が知らない甘美な過去がある。
彼らが語る「苦労」という言葉に騙されてはいけない。それが楽しいんだから。
2つ目は、「多くの人達に支えられて今がある」ということだ。会社を創業した当初は、一刻も早く売上をつくらないと終了する局面だったので、一にも二にも「お客様の獲得」ばかり考えていた。「お客様とどう接するか」「お客様にどう思ってもらえるか」といった、直接的なことばかり考えていた。しかしやがて、そんなに単純に世界はできてないことを知ることになる。
一見、全然関係ない人。それは、同じビルに入っている人だったり、近所の飲食店のオジさんだったり、面接で一度だけオフィスを訪れる学生だったり、いかにも直接的な売上に繋がらなそうな人達が、見えないところで自社を支えてくれている。
同じビルに入っている人の親戚が、HALOの見込み客だったり、
近所の飲食店のオジさんが、飲んでる客にHALOの話をしてくれたり、
面接で一度だけオフィスにきた学生のお兄さんが、ソーシャルメディアマーケティングの課題を抱えていたり、なんてことがよくあるのだ。
誰かの知り合いの知り合いの・・と辿ると、お客様にたどり着く。「知り合いを6人辿ると、世界中の人にアプローチできる」なんて話は昔から言われていたが、同じ日本の中で限定した場合、ビックリするくらい早く、お客様にたどり着く。
たどり着くのは、良い話も、悪い話も両方だ。週刊誌やテレビを見る限り、悪い話の方が伝搬力は強いかもしれない。しかし、良い話もじっくりと時間をかけて確実に伝わる。
ココに時間軸を加えれば、一期一会の大切さがいっそう身にしみてくる。
最近、Facebookなどでソーシャルグラフが可視化されはじめたことで、ますます、僕はこの思いを強くしている。しかし、ネット上でつながったり、発言したりしている人の数や発言内容は一部に過ぎず、その1万倍以上、目に見えないものが我々を支えている。
「本当に大切なものはね、目には見えないんだよ」(『星の王子さま』より)
おかげさまで、この度、オフィスを移転することができました。
ありがとうございます。